「っカァアァァァァ!!勇者どもがーっ!毎度毎度・・・」

光も届かない洞窟の深部、遠くに居ても不気味に響くほどの大声で毒つく烏の魔人の姿がある。

度重なる勇者との戦闘の敗退・・怒り心頭なのは毎度の事ながら、今回ばかりは状況が違った。

手持ちで動かせる兵力は大小合わせて50体を切り、何より深刻なのは、ついに援軍や補給が打ち切られてしまったこと。

如何せん一騎千頭の勇者は、既に10を超える数・・・それに大して大型メカの兵力は20そこそこ・・・到底勝ち目がないのだ。

「これで勇者どもに勝てるものなのカー?・・・・ハァ・・・」

チラリと横目で視線を送る・・・

手持ちの兵力とは比べるまでもない、強大な力と瘴気を秘めた狼の魔人・・・しかしその魔人でさえ、やる気なさげに腕組みして佇んでいるだけなのだ。

「ディアス様ぁー!どうにかお力添えをー・・・ぶぇっ!?」

コレしか手は無い・・と駆け寄るも、裏拳で一蹴(?)されてしまう。

地面に嘴で一直線の溝を掘り、やっと止まるとシュウ〜と蒸気をあげる、何とも情けない姿を晒すに終わってしまった。

「いい加減黙っていろ・・・第一俺はもう、この世界に興味などない」

「じゃあ何故まだこの世界に留まってるんですカー!?・・・この世界に・・?アレ?」

勢いよく起き上がる・・・が・・・そう、気づいたのだ。狼の魔人=ディアスが何を待っているかに。

(しかし、こう負けっぱなしもシャクだしな・・・せめてあのクソ勇者どもに一泡吹かせてやらねぇと)

 

 

 

 

 

所変わって、今勇者達の拠点となっているガーンベースだが・・・

「しかしなぁ・・当の本人は知らないって言ってるじゃあないか?」

「いや・・だからそれは、彼女の癖で・・・」

実は少々ややこしい事が起きていた。・・・・まずは順を追って説明しよう。

事の始まりは、まず最初のガーンベースの来訪者だった。その来訪者が一人の少女というだけならまだいい。

天使さながらの翼を持ち、突然出迎えた拓也に「ここが悪魔の本拠地ー!」と突然ぽこぽこと殴りかかってきたのだ。

誤解を招く状況の中、落ち着かせようとしていた所に第二の来訪者・・・

17・8ほどの男女二人が訪れ、その突拍子もない少女を迎えに来たというのだ。

「俺は笹山聡、この子の本来の保護者の友達なんだが・・・諸般の事情で彼はまだ来れなくて」

彼の連れ、折笠紗由璃を名乗る少女も彼に続くが、保護者の名前を聞かせても、その少女は聞き覚えがないと言う・・・

そんな堂々巡りが繰り返されていたわけで・・・

 

 

 

 

そんな騒ぎも知らず、守屋仁はサイガと共にいつかの教会を訪れていた。

今度は道も覚えている。その教会の扉に手を添えると・・・突然勝手に内側に開いていく。

「あっと・・失礼〜」

「あ・・いえこちらこそ・・」

すれ違いに出て行く女性・・・外に出ると、誰かと携帯電話で話しはじめる。

教会に入るが・・・前回と同様「誰もいない」のだ。

「やっぱり違うのかな・・・」

溜息ひとつ吐き踵を返し、先ほどの女性にこの教会の牧師の事を訊いてみる。

折笠奈美と名乗るその女性、何と牧師と知り合いだという。

話が弾むかと思った矢先、突然不気味な魔人達に取り囲まれる。

ガーンベースまで走ろうとするものの、徐々に3人は散り散りにされ、追い詰められていく。

 

 

 

 

ガーンベースでややこしい問答をしていた一同。突然紗由璃の携帯に奈美からの連絡。件の少女の事はひとまず・・・と、その場を後にする。

ガーンベースにも魔人出現の連絡が入る。大小合わせてその数は40体。直ちに全勇者が駆けつけサイガと、そしてガーンベースを後にした聡もその場に居た。

すぐさま巨大化しゼイドの姿に変身する聡。そのプロセスにサイガは、かつて出会った瞬を思い出し、仲間であると悟る。

しかし、魔人の一体の手の中に、仁が捕まっているのを目の当たりに、動けなくなる勇者達。

その魔人の肩に現れるクロウデス。

クロウデスの指揮の元、残っていた数体の魔人が別の街を襲いはじめる。動けば仁の命はない。

勇者達の・・ゼイドの目の前に一枚の羽根が舞い落ちる。それを見たゼイドは・・

 

「カーッカッカッカ!悔しいかぁ?何せお前達が動けなきゃ、この世界に魔人に対抗できるものなんかねぇからなぁ!」

「卑怯な・・・」

焦りと怒りは募るばかり、しかしその中でゼイドは一人不敵な笑みを浮かべる。

「クロウデスと言ったな。忠告しておく」

「ぁ〜?」

ゼイドはクロウデスを指し・・言い放った。

「勇者は一人ではない。ここにいる者だけが勇者ではない!」

 

 

 

 

襲撃を受けている街では、人々には逃げ惑うしか手は無かった。

数は巨大な魔人が1体、人間サイズの小型の魔人が2体と、その数は僅か。

しかしクロウデスの指摘通り、勇者が唯一の対抗手段である以上、1体でも野放しになればこの状況は必然だった。

辺りは瓦礫と火災、逃げ遅れた人達の亡骸さえ転がっている惨状・・・

「遅れたな・・・申し訳ない・・・」

惨状の中、不似合いにも魔人の目の前で亡骸に安寧を祈る男がいた。

幾人もの命を奪ったその狂気がその男にも襲い掛かり・・動かなくなる。

次の瞬間弾け飛び、粉々になったのは・・・魔人の方だった。

「斯様な魔物を野放しにしておった我等の罪、しかと償おうぞ!ボルク!」

男が見据える煙の向こう・・交差する二人の影。一方は魔人、もう一方は・・長い袖の衣に身を包んだ青年の姿があった。

魔人は青年の持っている剣に腹を貫かれ、その場に崩れ落ちる。

「勿論だっ」

二人は最後に残った巨人を見据えて飛び上がる。

青年は光と闇の鱗を纏う龍に、男は赤い獅子を模した巨人に姿を変える。

獅子の巨人は龍の雄叫びを纏い、巨大な弾丸のように魔人に飛び込む。木っ端微塵に四散する魔人。

 

 

 

 

「カァァ!?全滅だとぉ!」

伏兵の全滅を聞き、唖然となるクロウデス。その隙を「彼等」は逃さなかった。

魔人の腕が突然動かなくなり、異音がクロウデスの耳に飛び込む。

「次から次へとっ!今度は何だぁぁ!」

乗っている肩から、その魔人の肩の関節を見下ろす・・・と、一発の弾痕が空いているのを見つける。

「カアアァァァ!!?」

思わず弾が飛んできた方向を見ると、目に留まるのは数百メートルも離れたビルのみ。そんな距離から肩の関節の、腕の信号を伝えるケーブルを貫いたのだ。

「2重封印完了っと・・・意外とアッサリ成功したなぁ・・」

驚くのも束の間、クロウデスは声がした方に顔を向けると、そこには一頭の天馬・・・ペガサスが居た。メカの類ではない。本物のペガサスだ。

気がつくと魔人の全身に羽根が突き立っている・・・その羽根の力か、魔人は腕どころか全身動けなくなっていた。

「今だっ!兄ちゃん!」

そのペガサスが空に向かって叫ぶ。勇者達もクロウデスも・・仁も見上げると、そこには青い鳥の姿。

魔人に向かって急降下してくる。

仁は目を見開いた・・・!あの日の・・・

考えようとした時には、魔人の腕が切り裂かれ、仁の姿はそこにはなかった。

仁の思考は一瞬止まり、ゆっくり目を開く。抱えられているが、魔人の手の中とは違う。

 

「胡蝶の夢の続きを見ようか・・・」

青い鳥は、一人の青年に姿を変えていた。

あの日、仁のいた世界に迷い込んだ若い神。今度はその彼=瞬が、仁を助けたのだ。

 

 

先ほどガーンベースで騒動を起していたピクシーとも合流。

さらにペガサスから人の姿に変わった和馬、魔人の腕を打ち抜いたライフルを下げた達也を加えたバスターチームが魔人を撃破。

満を持して現れるディアス・サージに対し、勇者達も一斉に合体。徐々にディアス・サージを追い詰めていく。

 

 

「観念しろっ もうお前に勝ち目は無い」

ディアスに引導を叩き付ける。が、ディアスは深い傷に多少口元を歪めるものの・・・。

「ふん・・悪いが・・・もうお前達に用などない・・」

「?何を言っている・・」

話が噛み合っていない。その真意を探り損ねた勇者達だが、ディアスがその頭を持ち上げる。

勇者達もその視線を追う・・・真南に上った月が姿を見せていた。

「満月・・とまでは言わずとも、まぁこれだけの魔力があれば十分か・・・」

満ちた月には魔力が宿る・・・古来より様々な形で言い伝えられている。

何かの企みか・・・勇者達は身構える。

 

「ウオオオオオオオオオォォォォォン!!」

ディアスは大きく吼え上がる。

その雄叫び、その魔力は、ディアスの頭上に巨大な空間の歪みを生み、ワームホールを形成した。

「クロウデス・・行くぞ」

「カァ!? ま、まってくださいよー!」

ワームホールに飛び込んでいくディアスとクロウデス。二人を飲み込むとワームホールが閉じてしまう。

あまりにも急な事、何より手順も何もなく、魔力と雄叫びだけで強引に空間を歪ませ、ワームホールをこじ開けてしまう圧倒的な力に、誰もが改めて圧倒されていた。

「何というバケモノだ・・・」

 

 

あのような強大な魔人を放っておくわけにはいかない・・・と全員の意見は一致。

ディアス達が飛んでいった「世界」を目指し、一同ランサー級戦艦へと乗り込むと、その世界を後にする。


まず、散々お待たせしておきつつ、あらすじ形式とSS形式の混同で申し訳ないです。

今だ未完成のため改めて完成版を上げ直す所存です(汗

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